本来の用途である音楽制作や楽器演奏のみならず、音楽鑑賞用途でも人気のモニターヘッドホン。
プロ向けに設計されたモニターヘッドホンは、導入コストを抑えつつ、優れた耐久性や高級ヘッドホンにも劣らない高音質を誇るモデルも存在します。
この記事ではモニターヘッドホンの特徴や種類をまとめながら、おすすめの開放型モニターヘッドホンを紹介していきます。
ヘッドホンを選ぶ時に確認したい3つのポイント
プラグ形状
モニターヘッドホンは業務用途を想定して設計したモデルが多いため、プラグ形状を確認してから購入する必要があります。
モニターヘッドホンの多くでは、ミキサー卓やオーディオインターフェースに直接接続できるように6.3mm標準プラグを採用しており、通常の音楽プレイヤーやPCなどに繋ぐことができません。
中には変換プラグを同梱しているモデルもありますが、そうでない場合、通常の3.5mmプラグへと変換するケーブルやプラグ等が必要になります。
また、ケーブルの交換が可能なモデルでは、断線時やリケーブルする時のために、ヘッドホン側の接続端子を確認しておくこともおすすめします。
本体構造
ヘッドホン本体の構造によって、開放型・密閉型と、それらの中間的な半開放型に区別することができます。
開放型

開放型はオープン型とも呼ばれ、ヘッドホンの耳当て部分の外側、「ハウジング」と呼ばれる部分から音が漏れる構造になっているものを指します。
ドライバーの背面が開放されているため、蒸れや圧迫感が軽減されるほか、スピーカーに近い音の広がりや奥行きが感じられます。
超高音や重低音の再生には向いていませんが、中高域の伸びが自然で、歌モノやオーケストラなどと相性が良いと言われています。
しかし、ハウジング部が開放されていることから音漏れが大きめなうえ、外からの音もほぼ素通しで聞こえてくるため、マイクを使用した録音や騒音の多い環境での使用は不向きです。
密閉型

密閉型はクローズド型とも呼ばれ、ハウジングに穴が空いていない、密閉されているものを指します。
開放型と比較するとより近くから音が聞こえてくるように感じられ、密度のあるサウンドが楽しめます。
音漏れが少なく、外からの音も通しにくい構造になっているので、レコーディングや演奏時のモニターとして使用されることも多いです。
ハウジングが密閉されている影響により、開放型よりもやや聞き疲れしやすく、夏場は蒸れやすく感じる場合もあります。
半開放型

開放型同様ハウジングに開口部が設けられているものの、開口部がやや小さめで密閉型の特徴も兼ね備えたものを半開放型(セミオープン型)といいます。
どこからどこまでが半開放型かという明確な定義はないものの、メーカーが半開放型と表記している場合これに当てはまります。
開放型同様音漏れが大きいものの、耳あたりのいいサウンドが特徴のモデルが多いです。
オーバーイヤーorオンイヤー
ヘッドホンを購入する際に以外と見逃されがちなのが、オーバーイヤー、オンイヤーなどの装着方法です。
オーバーイヤー

オーバーイヤーヘッドホンは、耳を覆う部分、イヤーパッドが完全に耳全体をカバーするように装着できる構造です。
耳をすっぽり覆うことができるので、より音漏れが少なく、周りの音をシャットアウトできます。
一方、長時間装着していると蒸れることがあり、暑い季節やお風呂上がりなどでは快適に使用できないこともあります。
オンイヤー

オンイヤーヘッドホンは、耳たぶの上から装着するような構造のヘッドホンです。
オーバーイヤーと比べるとやや音漏れが大きく、外からの音も聞こえてきてしまう場合があります。
オンイヤー型はコンパクトで可搬性に優れるほか軽量なものが多く、長時間の装着でも首が疲れにくいというメリットもありますが、構造上耳がイヤーパッドに押さえつけられるので、耳や頭が大きめの方は注意が必要です。
おすすめの開放型モニターヘッドホン
AKG K240 STUDIO
ウィーン発祥の音響機器メーカー、AKGのヘッドホン。
オープンタイプのヘッドホンの中でも「半開放型」に分類され、密閉型と開放型の中間的な構造を持っています。
開放タイプのため低音は抑えめですが、柔らかなサウンドと高級機種にも劣らない中高域の表現力が特徴です。
価格も1万円以下と、比較的高額なモデルが多い開放型ヘッドホンの中でも驚異のコストパフォーマンスを誇ります。
価格を抑えつつ、楽器演奏や音楽鑑賞用のヘッドホンが欲しい方におすすめです。
beyerdynamic DT990 PRO
創業100年の歴史を持つドイツの老舗メーカー、beyerdynamicのモニターヘッドホン。
大きめのハウジングとベロアのイヤーパッドにより、耳をすっぽりと覆えるため装着感はきわめて良好です。
開放型としてはかなり量感のある低域と、突き抜ける高域が癖になるドンシャリ系サウンドが特徴的です。
ロングセラーモデルのためイヤーパッドやヘッドバンドなどの交換パーツが豊富な点もこのモデルの強みです。
インピーダンスが250Ωと高いため、ヘッドホンアンプと組み合わせて使用できる方におすすめです。
オーディオテクニカ ATH-R70X
オーディオテクニカのプロ向けシリーズ唯一の開放型ヘッドホン。
全体的にフラットでクリアなサウンドが特徴。低音もしっかりと出ているので音楽制作のほか鑑賞用としての使用もおすすめです。
約210gと非常に軽量なほか、通気性の良いイヤーパッドと頭頂部の3Dウイングサポートにより軽快な装着感が特徴です。
業務用機器との接続を想定して470Ωと高インピーダンスになっているため、オーディオインターフェイスやヘッドホンアンプ等を使用することをおすすめします。
AKG K712 PRO
クラシックの本場オーストリア発祥のメーカー、AKGのヘッドホン。
開放型ヘッドホンの上位機種で、広い音場と高解像度が特徴のリファレンスヘッドホン。
開放型ならではの、空気感までも再現する美しい中高域がモニター用途だけでなくリスニング用途としても高いポテンシャルを発揮します。
脱着式のミニXLRケーブルにより容易にケーブル交換が可能。リケーブルによる音質向上も望めます。
洗濯もできるベロアのイヤーパッドにより装着感も快適です。本革製のセルフアジャスト機能付きヘッドバンドなども備えた、高性能ヘッドホンです。
ゼンハイザー HD490PRO
ゼンハイザーの最新モニターヘッドホン。
同社のプロ用モデルとしては最上位に位置する製品で、専用キャリングケースや長めの3mケーブルなどが追加で付属する豪華版の「HD490PRO Plus」も同時発売されています。
交換用イヤーパッドが2種付属し、ミキシング向けのファブリック素材と音楽制作向けのベロア素材を選択して使用できます。
金属製のヘッドバンドに、容易に交換可能なイヤーパッド・ヘッドパッド、プラグ付近でカール状にすることで衝撃を緩和するケーブルなど、プロ現場での運用を意識した仕様になっています。
高解像度ながら聴き疲れしづらいフラットなモニターサウンドが特徴で、左右に広い音場と優れた定位感により音像を正確に把握できます。
比較的高額なモデルですが、業務用モデルならではの高い耐久性に加え、交換用イヤーパッドが2種類付属してくることを考えると、高性能のモニターヘッドホンを長期的に使用したい方にとってはお得なモデルといえます。


